
インドネシアの給与計算|グロスとネットが共存する理由
インドネシアでの給与計算では、「グロス(税込み)」と「ネット(税抜き)」の両方広く存在しています。
なぜ、インドネシアでは「グロス(税込み)」と「ネット(税抜き)」の両方が存在するのでしょうか?
本コラムでは、インドネシア特有の給与事情とその背景について解説します。
複雑な残業代計算と「残業歓迎」の文化
インドネシアでの給与計算において切っても切り離せないテーマが、時間外労働賃金(残業代)です。
特に中年~年配層では現在でも残業に対する社員のモチベーションが非常に高く、「どんどん残業したい」と考える傾向が強いのが特徴です。
その最大の理由は、時間外労働賃金の割増率が日本と比べて非常に高く設定されているためです。
【現行法規における時間外労働賃金の割増率(週5日、週40時間の勤務制度の場合)】
| 労働の種類 | 労働時間 | 割増率 |
| 通常就業日 | 1時間目 | 1.5倍 |
| 2時間目以降 | 2倍 | |
| 休日 | 8時間まで | 2倍 |
| 9時間目 | 3倍 | |
| 10時間目・11時間目 | 4倍 |
特に現場作業者の場合、基本給が決して高いとは言えないため、多くの人が残業で収入を増やしたいと考えています。
例えば、24時間操業の工場において「3シフト制(残業なし)」にするよりも、社員側からは「2シフト制+毎日3時間の残業」が望まれるケースが多々あります。
もし毎日3時間の残業に加え、土曜日も3時間残業をしてフルタイムで働いた場合、月に295.5時間分の時間外労働賃金を受け取ることになり、たった1ヶ月で定額賃金の2.5倍もの額を手にする計算になります。
このように残業代へのこだわりが強い上に計算が複雑なため、社員には「自分で計算した手取り額と合っているか、確実に確認したい」という強い欲求があります。これがネット(手取り)設定に固執する理由の一つです。
「ネット設定」でないと安心できない歴史的背景
残業代だけであれば、グロス計算された給与明細でも確認は可能です。しかし、インドネシアの所得税計算は社員にとって非常に複雑です。
日本では「会社が正しく計算しているはずだ」と信じるのが一般的です。
しかし昔から手取り文化が根付いているインドネシアでは、自分で計算した金額と実際の支給額が少しでも異なると、会社への不信感に繋がり、円満な労使関係を築きにくくなってしまいます。
こうした背景から、多くの会社が「受領する額(手取り)で契約する方が明瞭でトラブルが少ない」と判断し、ネット設定を選んでいるのです。
ネット設定の所得税算出メカニズム
手取り賃金額をベースに、所得税分を上乗せ(グロスアップ)して計算します。このグロスアップした金額を「社員の賃金総額」とみなし、そこから所得税を控除して会社が納税することで、社員が認識している「手取り額」とピタリと一致する仕組みです。
社会保険料の取り扱いはどうなるのか?
では、社会保険料の扱いはどうなっているのでしょうか。
インドネシアでも全社員を2種類の社会保障に加入させる義務があり、それぞれ「会社負担分」と「社員負担分」が定められていますが、ネット設定における対応は会社によって異なります。
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パターンA:社員負担分も会社が負担する
「ネット設定=社員の口座に振り込まれる金額」という解釈を徹底し、社員負担分の社会保険料も会社が全額負担するケース。
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パターンB:ネット賃金から社員負担分を控除する
「保険料は賃金から控除されるべきもの」という前提で、ネット設定の賃金から社会保険料(社員負担分)のみを控除するケース。
社会保険料の計算は所得税ほど複雑ではないため、パターンBのように控除を行っても、比較的スムーズに社員に受け入れられているようです。
まとめ
インドネシアでは給与計算方法が「グロス(税込み)」と「ネット(税抜き)」の両方が存在することを解説しました。
貴社及び貴社従業員にとって最適な計算方法はどちらでしょうか。
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