
株価算定の費用と期間|目的別(M&A・第三者割当・税務・ストックオプション)の違いと依頼時の注意点
株価算定の費用(企業価値評価の費用)は、算定書の用途・提出先、評価手法の数、評価対象の複雑さで決まります。当社の経験に基づく目安では、M&Aや第三者割当増資などで使う正式な株価算定書は80〜150万円(税別)が中心で、社内検討用の簡易な算定であれば50万円程度から、複数事業や海外企業を含む複雑な案件では150〜300万円程度です。期間は、資料が揃っていれば当社の目安で4〜6週間、複数事業の評価や事業計画の作成支援を伴う場合は2か月程度です。期日がある場合は1.5か月前には依頼してください。
この記事では、株価算定の費用について、当社の経験に基づく案件類型別の目安を示したうえで、費用を決める要因、M&A・第三者割当増資・ストックオプション・組織再編など目的別の違い、標準的な期間、見積依頼時に伝えるべき項目を整理します。
株価算定の費用:当社の経験に基づく目安
株価算定の費用は、公開されている料金表を見ても数十万円から数百万円まで幅があり、金額だけを比べても判断できません。そこで、当社がこれまで担当した案件の経験に基づき、案件の類型ごとの目安を示します。いずれも税別で、実際の費用は評価対象の内容と用途によって変わります。
案件の類型別の費用の目安
| 案件の類型 | 費用の目安(税別) | 主な内容 |
| 社内検討用の簡易な算定 | 50万円程度〜 | 単一事業で、評価手法は1〜2つ、報告書は簡潔なもの。M&Aの初期検討や価格目線の把握など、社内の意思決定用 |
| 正式な株価算定書(標準的な案件) | 80〜150万円 | M&A・第三者割当増資・ストックオプション・組織再編などの目的で、複数の評価手法を併用し、取締役会や取引の相手方への説明対応を含む。監査法人への提出・説明対応を伴う場合はレンジの上限側 |
| 複雑な案件 | 150〜300万円程度(個別見積) | 複数事業・子会社を含む、種類株式やストックオプションなどの潜在株式がある、海外企業の評価で現地通貨建てのキャッシュフロー・カントリーリスク・英文報告書が必要、など |
監査法人への提出を伴う算定書(第三者割当増資やストックオプションの会計処理の前提、PPAや減損テストの基礎になるものなど)は、監査法人側の評価専門家のレビューを受けます。そのため、前提の根拠資料や計算モデルの提出、質問対応が必要になり、報告書の記載水準も上がることから、費用は同じ目的の社内用の算定より高くなります。
なお、監査法人系FASや大手評価会社に依頼する場合、上場会社の複数事業・複数子会社を含む案件では数百万円から1,000万円を超えることもあります。また、無料診断や自動算定レポートは、専門家が署名する正式な算定書とは別のものです。
株価算定の費用を決める要因
- 用途と提出先:社内の意思決定用か、取締役会・株主・取引の相手方への説明用か、監査法人・税務当局・裁判所への提出用か。したがって、提出先が重くなるほど、根拠の記載と専門家の関与範囲が増えます。
- 評価手法の数:DCF法のみか、類似会社比較法・時価純資産法などを併用するか。M&Aや第三者割当の算定書では複数手法の併用が標準です。
- 評価対象の複雑さ:たとえば、単一事業か複数事業か、子会社・関連会社の数、非事業用資産の有無、種類株式やストックオプションなどの潜在株式の有無。
- クロスボーダー:また、海外企業の評価では、現地通貨建てキャッシュフロー、カントリーリスク、現地の類似会社データ、英語での報告書作成などが加わります。
- 説明対応の範囲:さらに、取締役会への出席、監査法人・税務当局・相手方の評価人への説明・質問対応がどこまで含まれるか。
株価算定の費用の目的別の違い
株価算定は目的によって、求められる価値の概念、評価手法、報告書の体裁が異なります。そのため、同じ会社の株式でも、目的が違えば結果が異なることは珍しくありません。
目的別の価値概念・手法・報告書の比較
| 目的 | 求められるもの | 主な評価手法 | 注意点 |
| M&A(買収・売却) | 取引価格の妥当性の根拠。買い手は取締役会の意思決定の記録として、売り手は交渉の裏付けとして | DCF法、類似会社比較法、(参考として)時価純資産法 | シナジーやコントロールプレミアムの扱いを整理する。買収後のPPAとの整合 |
| 第三者割当増資 | 発行価額が「特に有利な発行」に該当しないことの説明(会社法) | DCF法、類似会社比較法。直近の取引事例 | 既存株主への説明責任。上場会社では取引所の規則も確認 |
| ストックオプション | 権利行使価額の設定根拠(税制適格要件、会計上の公正な評価額) | DCF法、類似会社比較法、(オプション価値には)ブラック・ショールズ等 | 税制適格の「1株当たりの価額」と会計上の公正価値は別の概念。セーフハーバーの利用可否を確認 |
| 株主間の株式売買、自己株式取得 | 売買当事者間、または税務上の妥当性 | 目的により時価純資産法、DCF法、配当還元法 | 個人株主が絡む場合、税務上の時価との関係を顧問税理士と整理 |
| 相続・贈与の税務申告 | 財産評価基本通達に基づく評価 | 類似業種比準方式、純資産価額方式 | M&A目的の株価算定とはまったく別の評価。税理士の業務範囲 |
| 組織再編(合併比率・株式交換比率) | 比率の公正性 | 各当事会社のDCF法・市場株価法など | 双方の株主に対する説明。上場会社では第三者算定機関の関与が一般的 |
| 減損テスト・PPA | 会計上の見積りとしての公正価値・使用価値 | DCF法 | 監査法人のレビュー対応が中心 |
標準的な期間
中小規模の非上場会社の正式な株価算定書で、資料が揃っていれば、当社の目安では4〜6週間です。複数事業の評価を伴う場合は2か月程度を見込みます。期間を左右する最大の要因は、事業計画が整っているかどうかです。事業計画の作成支援からご依頼いただく場合は、期間を別途ご相談ください。
| 段階 | 内容 | 目安 |
| 資料収集・ヒアリング | 財務資料、事業計画、資本政策の受領。経営者・事業責任者へのヒアリング | 1〜2週間 |
| 分析・評価 | 過去業績の分析、事業計画の検証、割引率の算定、各手法による評価、感度分析 | 1〜2週間 |
| ドラフト報告・協議 | ドラフト算定書の提示、前提の確認、必要に応じた修正 | 1週間 |
| 最終化・説明 | 算定書の確定、取締役会・監査法人等への説明 | 1週間 |
つまり、上の表の各段階の合計が4〜6週間です。そのため、取締役会の決議日や増資の払込日、ストックオプションの付与日など、期日が決まっている場合は、そこから逆算して1.5か月前には依頼することをおすすめします。
株価算定の費用の見積を依頼するときに伝える項目
株価算定の費用について、複数の評価人から比較可能な見積を取るには、次の情報を伝えてください。
- まず、算定の目的と報告書の提出先(取締役会、監査法人、税務当局、相手方など)
- 次に、評価対象:会社名、業種、事業の数、売上規模、子会社の有無、上場・非上場
- 評価基準日と、算定書が必要な期日
- 株式の種類:普通株式のみか、種類株式・ストックオプション・新株予約権付社債などの潜在株式があるか
- 事業計画の有無と作成状況(期間、粒度、経営者の承認の有無)
- 希望する評価手法(不明な場合は評価人に任せてよい)
- 感度分析・シナリオ分析の要否
- また、納品物:算定書のみか、計算モデル(Excel)も必要か
- 最後に、説明対応の範囲:取締役会への出席、監査法人・相手方評価人との協議の要否
株価算定の費用が安い見積で注意すべき点
- 簡易試算と正式な算定書の区別:無料診断や自動算定レポート、Excel数枚のシミュレーションは、取締役会や監査法人への提出に耐える算定書とは別物です。したがって、用途に合ったものを依頼してください。
- 事業計画の作成支援が含まれていない:事業計画がない状態で依頼すると、評価人が作成支援を行う分の追加費用や期間が発生します。
- 説明対応が含まれていない:監査法人や相手方からの質問対応が別料金の場合、その結果、総額が膨らみます。
- 評価人の経験:目的に応じた実務経験(第三者割当の有利発行判断、ストックオプションの税制適格要件、PPAとの整合など)がない評価人に依頼すると、算定書が用途に合わないことがあります。
まとめ
株価算定の費用は、当社の経験に基づく目安では、正式な株価算定書で80〜150万円(税別)が中心です。社内検討用の簡易な算定は50万円程度から、複数事業・潜在株式・海外企業を含む複雑な案件は100〜200万円程度で、監査法人への提出・説明対応を伴う場合は同じ目的でも高くなります。また、目的によって求められる価値の概念と評価手法が異なるため、依頼時には目的と提出先を明確に伝え、評価対象の内容、説明対応の範囲、納品物をそろえて見積を比較することが重要です。なお、期日がある場合は1.5か月前には依頼してください。
Keystone Advisoryに相談できること
Keystone Advisoryでは、M&A、第三者割当増資、ストックオプション、組織再編などの目的に応じた株価算定を、公認会計士が担当しています。株価算定の費用については、目的・提出先・期日・評価対象の概要をお知らせいただければ、評価手法、感度分析、説明対応、納品物(算定書・計算モデル)の範囲と税区分を明示した見積をご提示します。買収後のPPAや減損テストとの整合を見据えた算定、日本企業によるインドネシア企業の株価算定にも対応しています。お問い合わせフォームからご連絡ください。
参考資料
執筆者
田邉 健介(公認会計士)
Keystone Advisory
監査法人トーマツ、PwCアドバイザリーにてバリュエーション・PPA業務、法定監査、IPO支援に従事。PEファンドでの投資先取締役、事業会社での発行体としてのIPOを経て現職。
※本記事の費用・期間の目安は、執筆時点における当社の経験に基づくものであり、市場全体の相場を示すものではありません。実際の費用は個別のお見積りによります。税務上の株式評価については税理士にご相談ください。



