Indonesian minimum wage | Practical measures that companies should take

毎年11月が近づくにつれ、
インドネシアの翌年の最低賃金改定に関する議論が活発化します。

インドネシアの最低賃金の決定には法的な期限が設けられているものの、
実務においては発表の遅延が常態化しているのが実情です。

しかしながら、不確実な状況に同調して企業側の対応を後手に回すことは、
深刻な経営リスクに直結しかねません。

 

本コラムでは、毎年繰り返される最低賃金決定のプロセスと傾向を
整理するとともに、企業が今から着手すべき実務的な防衛策について解説いたします。

 

1. 最低賃金決定における法定スケジュールと実態

インドネシアの現行法規において、翌年1月1日より適用される
最低賃金の決定期限は以下のように定められています。

 

対象 決定期限 施行までの猶予
州最低賃金(UMP 11月21日まで 施行の40日前
県/市最低賃金(UMK 12月1日まで 施行の30日前

 

実態:決定期限の遅延リスク

過去の事例を振り返ると、
これらの法定期限が遵守されないケースが散見されます。

労使双方において「スケジュールの遅延は想定内」という認識が
浸透しつつありますが、
過去には大統領の強い意向により事前の根拠なく一律の引き上げが決定され、
各州知事がそれに追随した異例の事態も発生しています。

 

例年の慣例を過信せず、予測不可能な事態に対する警戒を怠らないことが重要です。

 

2. 労働組合の要求傾向とその背景

例年8月頃より、
労働組合連合は「翌年の最低賃金を10%〜15%引き上げるべきである」
といった強気の主張を展開し始めます。

一見すると過大な要求に思えますが、この一連の動きには明確な傾向が見受けられます。

 

8月〜10月(要求の提示期) 明確な根拠を伴わない高水準の引き上げ率を要求する傾向。
交渉を有利に進めるための布石としての意味合いが強く、ジャカルタ州において大幅な賃金水準(例:600万ルピア等)を要求したり、「外資系企業に対する独自の最低賃金適用」といった法外な主張が飛び出したりすることも過去事例あり。
11月中旬(現実路線への回帰) 決定時期が近づくにつれ、要求水準をトーンダウンさせ、「現状と同等の引き上げ率」に着地させようとする動きが見られる。

 

労働組合の真の狙いは、
「前年の引き上げ率(%)を下回る事態を回避する」点にあると考えられます。

政府側も大規模な労働争議やデモを回避したいという意向が強く働くため、
最終的には「前年と同水準の引き上げ率」で決着する可能性が極めて高いのが実情です。

 

3. 企業が準備すべき3つの実務対応

こうした不確実な状況下においても、
企業は法令に基づいた冷静な準備を進める必要があります。

直前での混乱を避けるため、現段階から以下の3点を確認しておくことを推奨いたします。

 

① 公布される「法令」の正確な把握

政府の発表が二転三転した場合であっても、
最終的に公式公布される法令(決定書)の文言を正確に確認することが不可欠です。

「自社に適用されるべき最低賃金がどの区分に該当するのか」
正しく把握することがすべての起点となります。

② 就業規則および労働協約(PKB)の規定確認

年次賃金改定(年次昇給)の根拠として、
自社の社内規定にどのような条件が明記されているかをご確認ください。

「インフレ率」「企業の支払い能力(業績)」「同業他社や市場の動向」などを
考慮要素として規定している企業が多い一方、
労働組合との間で個別の配慮事項について合意しているケースも存在します。

③ 「企業の支払い能力」を裏付ける客観的データの準備

労使交渉の場において、「企業の支払い能力」を
論理的に説明するための根拠データが極めて重要となります。

これまで自社がどの指標(財務諸表の数値、生産性、その他の経営指標)を
基準としてきたのかを再確認し、最新のデータを整えておきましょう。

 

4. 円滑な労使交渉の鍵を握る「事前合意」

最低賃金が正式に発表されてから労働組合との交渉を開始するのでは、
十分な協議時間を確保することが困難です。

労働協約(PKB)を締結している企業においては、
基本となるデータや会社側の基本方針を事前に労働組合と共有し、
一定の共通認識(事前合意)を形成しておくことが、
年末の労使交渉を円滑に進める最大の要諦といえます。

周囲の混乱に影響されることなく、今日から自社の基盤を固めるための準備に着手しましょう。

 

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関連リンク:

JETRO(日本貿易振興機構):「インドネシア最低賃金、前年比で平均約6%上昇、ジャカルタ首都特別州は月額約570万ルピア」