インドネシアの税務調査とは|PMK15/2025後の流れと実務対応

インドネシアでは、法人税、源泉税、VATなどの申告内容について、税務署による税務調査が行われることがあります。特に、法人税やVATの還付申告を行った場合、税務調査に進むケースが多く、事前に流れと対応期限を理解しておくことが重要です。

また、2025年に施行されたPMK No.15/2025により、税務調査の種類やプロセスに変更が加えられています。従来よりも調査期間や反論期間が短くなる場面があり、今後はより早い段階で資料を整備し、調査官からの質問に迅速に対応することが求められます。

この記事では、インドネシア税務調査の基本的な流れ、PMK15/2025後の変更点、各プロセスで注意すべき実務ポイントを解説します。

インドネシアで税務調査が行われる主なケース

インドネシアで税務調査が行われる代表的なケースは、還付申告を行った場合です。法人税、所得税、VAT申告書において還付申告をした場合や、修正申告によって納税額が減り、その結果還付申告となった場合には、税務調査が実施されることがあります。

また、税務署から質問状が届き、その回答結果に基づいて必要と判断された場合や、税務署の判断により任意のタイミングで税務調査が行われることもあります。添付資料でも、還付申告、修正申告、質問状への回答、税務署の任意判断が税務調査の契機として整理されています。

還付申告の場合、法人税、源泉税、VATのすべてが対象となるケースが多く、VAT還付申請では原則としてVATが中心となります。ただし、誤りが他税目に波及する場合には、他の税目にも調査範囲が広がる可能性があります。

PMK15/2025による税務調査の区分

PMK No.15/2025では、税務調査の種類として、主に以下の3つが整理されています。

税務調査の種類 内容 期限の目安
包括的調査 申告書の全項目を対象とする詳細な調査 5か月
重点調査 申告書の特定項目に対する詳細な調査 3か月
個別調査 特定データや義務に関する簡易的な調査 1か月

移転価格の論点がある場合には、調査期間が延長される可能性があります。添付資料では、移転価格の論点がある場合、4か月延長可能とされています。

従来の還付調査では、申告から1年以内に調査が進むイメージが一般的でしたが、今後は調査の種類に応じてプロセスが短縮されることが予想されます。

税務調査の基本的な流れ

インドネシア税務調査は、一般的に以下の流れで進みます。

【税務調査の基本プロセス】

SP2発行・初回打合せ

税務署からの依頼資料の提出

税務調査の実施

予備的調査結果の通知

SPHPの発行・納税者による反論

税務署との最終打合せ

SKPの発行

PMK15/2025後のプロセスでは、SPHP発行前に予備的調査結果が納税者へ伝えられる点、SPHPへの反論期間が5営業日に短縮される点、SPHP発行から最終討議までが最大30営業日となる点に注意が必要です。

SP2発行と初回打合せ

税務調査は、税務調査通知書であるSP2の発行により開始されます。SP2には、調査対象年度、対象税目、初回打合せの日程などが記載されます。

注意すべき点は、SP2発行後は税務申告書の修正ができないことです。また、初回打合せにはDirectorの出席が求められることがあるため、日本人役員が関与している会社では、事前に日程を確認しておく必要があります。

初回打合せでは、分からない点について無理にその場で回答する必要はありません。誤った説明をしてしまうと、その後の調査対応で不利になる可能性があるため、確認が必要な事項は持ち帰って整理することが重要です。添付資料でも、初回打合せでは分からない点について無理に答える必要はないとされています。

依頼資料の提出と税務調査の実施

SP2発行後、税務署から資料提出依頼が行われます。資料提出期限は、通常、依頼日から1か月です。

ここで特に注意すべきなのは、期限後に提出した資料が証拠として認められないリスクがあることです。また、不備のある資料は追徴課税のリスクにつながる可能性があります。そのため、依頼資料は早期に整理し、不足資料がある場合には、対応方針を検討しておく必要があります。

税務調査では、提出資料をもとに、調査官から質問が行われます。質問にはできるだけ迅速に回答することが望ましいですが、回答内容の整合性も重要です。会計データ、税務申告書、請求書、契約書、移転価格文書などの説明が食い違わないよう、社内で事前に確認しておく必要があります。

予備的調査結果の通知とSPHPへの反論

PMK15/2025後の重要な変更点の一つが、SPHP発行前に予備的調査結果が納税者へ通知される点です。これにより、納税者は調査官と協議し、指摘事項について説明する機会を持つことができます。

調査官と合意に至れば、指摘が取り消される可能性があります。一方、合意に至らない場合には、SPHPへ進みます。

SPHPとは、税務調査での指摘事項や暫定的な追徴税額が一覧で示される通知です。SPHPが発行された場合、納税者は発行から5営業日以内に、書面で反論する必要があります。従来よりも回答期間が短くなっているため、SPHPを受領してから資料を集め始めるのではなく、調査期間中から反論資料を準備しておくことが重要です。添付資料では、SPHP発行から5営業日以内に書面で反論可能とされています。

適切に反論できれば、追徴税額を大幅に減額できる可能性があります。反対に、反論しない場合や反論資料が不十分な場合には、税務署の指摘がそのまま認定されるリスクがあります。

最終打合せとSKPの発行

SPHPへの反論後、税務署との最終打合せが行われます。これは、納税者が最終的な主張を行える重要な場面です。

最終打合せでは、指摘内容に対して同意するか、不服があるかを正式に記録します。この議事録は、その後に異議申立てや税務裁判へ進む場合に、重要な証拠資料となります。そのため、安易に同意せず、会社としての見解を明確に残すことが大切です。

その後、税務査定書であるSKPが発行されます。SKPには、過払いを示すSKPLB、支払不足を示すSKPKB、過不足なしを示すSKPNなどがあります。

SKPKBにより追徴税額が発生した場合、原則として発行日から1か月以内に納付する必要があります。

税務調査後の異議申立て・税務裁判

SKPの内容に不服がある場合には、異議申立てへ進むことができます。添付資料では、SKPに不服がある場合、3か月以内に異議申立てへ進行可能とされています。

異議申立てでは、国税総局が12か月以内に判断を行います。さらに不服がある場合には、3か月以内に税務裁判へ進むことができます。

ただし、追徴税額を未納のまま異議申立てや税務裁判に進む場合、敗訴時には最大60%のペナルティが発生する可能性があります。そのため、争うかどうかの判断にあたっては、税額、証拠資料、勝訴可能性、キャッシュフローへの影響を総合的に検討する必要があります。

税務調査で不利にならないための実務対応

税務調査で不利にならないためには、以下の対応が重要です。

・SP2受領前から申告書、元帳、請求書、契約書を整理しておく
・資料提出期限を管理し、1か月以内に提出できる体制を作る
・調査官からの質問には迅速かつ一貫した回答を行う
・SPHP前の予備的調査結果の段階で、早めに説明・反論する
・SPHP発行後5営業日以内に反論できるよう、証拠資料を準備する
・最終打合せの議事録に会社の主張を正確に残す
・SKP後に争う場合は、異議申立て・税務裁判の期限を厳守する

特に、還付申告を行う会社や、移転価格、VAT、源泉税に関する論点を抱える会社では、税務調査が始まってから対応するのではなく、申告前から資料を整備しておくことが重要です。

よくある質問

Q1. インドネシアで還付申告をすると税務調査になりますか?

原則として、税務調査が実施されます。

法人税の還付申告では、法人税だけでなく、源泉所得税やVATなど、その年度の主要な税目も併せて確認されるのが一般的です。一方、VATの還付申請では、基本的にVATが税務調査の対象となります。

なお、一定の要件を満たす納税者には、通常の税務調査に代えて書類確認を中心に処理する早期還付制度が適用される場合があります。

Q2. SP2を受け取った後に申告書を修正できますか?

SP2発行後は、原則として税務申告書の修正はできません。そのため、申告書を提出する前に、会計データ、税務計算、添付資料、還付ポジションの理由を確認しておくことが重要です。

Q3. 税務署から依頼された資料はいつまでに提出する必要がありますか?

通常、税務署からの資料依頼日から1か月以内に提出する必要があります。期限後に提出した資料は、証拠として認められないリスクがあります。調査開始後に慌てて資料を集めるのではなく、申告前から準備しておくことが重要です。

Q4. SPHPとは何ですか?

SPHPとは、税務調査での指摘事項や暫定的な追徴税額が記載された通知です。納税者は、SPHPの内容に同意できない場合、期限内に書面で反論する必要があります。

Q5. SPHPへの反論期間はどれくらいですか?

PMK15/2025後は、SPHP発行から5営業日以内に書面で反論する必要があります。期間が短いため、SPHPを受け取ってから資料を準備するのではなく、調査中から反論資料を整理しておくことが重要です。

Q6. 最終打合せでは何に注意すべきですか?

最終打合せは、納税者が最終的な主張を行う重要な場面です。指摘内容について同意するか、不服があるかを正式に記録するため、議事録の内容を慎重に確認する必要があります。この議事録は、異議申立てや税務裁判へ進む場合の重要な証拠資料になります。

Q7. SKPに不服がある場合はどうすればよいですか?

SKPの内容に不服がある場合、原則として3か月以内に異議申立てへ進むことができます。その後も不服がある場合には、税務裁判へ進むことが可能です。ただし、追徴税額を納付せずに争う場合、敗訴時のペナルティリスクにも注意が必要です。

Q8. 税務調査を受ける前に準備しておくべき資料は何ですか?

申告書、総勘定元帳、請求書、契約書、銀行明細、輸入書類、VAT関連資料、源泉税関連資料、移転価格文書などを整理しておくことが重要です。特に還付申告を行う場合には、還付理由を説明できる資料を事前に準備しておく必要があります。

まとめ

インドネシアの税務調査は、還付申告をきっかけに実施されるケースが多く、法人税、源泉税、VATなど複数の税目に広がる可能性があります。

PMK15/2025により、調査の種類が整理され、調査期間やSPHPへの反論期間も短縮されています。今後は、従来以上にスピード感のある対応が求められます。

税務調査で重要なのは、期限内に資料を提出すること、調査官とのやり取りを正確に管理すること、SPHPに対して適切に反論すること、そして最終打合せで会社の主張を記録に残すことです。

インドネシアで税務調査、SP2、SPHP、SKP、異議申立て、税務裁判への対応に不安がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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