インドネシア駐在員の一時帰国時の税務|日本滞在中の給与課税と183日ルール

駐在員がインドネシアから日本へ一時帰国する場合、日本滞在中の給与課税、183日ルール、インドネシア側での申告・外国税額控除を確認する必要があります。

インドネシアに駐在している日本人が一時帰国する場合、日本とインドネシアのどちらで給与が課税されるのかが問題になることがあります。

通常の短期出張や休暇であれば大きな問題にならないこともありますが、一時帰国が長期化する場合や、日本法人・インドネシア法人の双方から給与を受け取っている場合には、税務上の取扱いを確認しておく必要があります。

特に、日本滞在が長くなる場合には、日本側での非居住者課税、租税条約上の短期滞在者免税、インドネシア側での外国税額控除など、複数の論点が関係します。

この記事では、インドネシア駐在員が一時帰国する場合の給与課税、183日ルール、一時帰国費用の負担について解説します。

一時帰国時の税務で確認すべきポイント

インドネシア駐在員が一時帰国する場合、まず確認すべきなのは次の点です。

確認項目 主なポイント
日本での滞在日数 183日未満か、183日以上か
給与の支払者 日本法人か、インドネシア法人か
勤務実態 日本滞在中にどこで勤務していたか
給与負担者 最終的にどちらの法人が負担しているか
役職 使用人か、日本法人の役員か
租税条約 短期滞在者免税の要件を満たすか

給与課税では、単に「どこの銀行口座に支払われたか」ではなく、どこで勤務したか、誰から給与を受け取ったか、その給与がどの勤務の対価かが重要になります。

日本法人から支給される給与

インドネシア駐在員の中には、インドネシア法人からの給与とは別に、日本法人から給与や手当の支給を受けている方がいます。

日本の所得税では、非居住者については、原則として日本国内源泉所得が課税対象となります。ただし、給与については、単に「日本法人から支払われているか」ではなく、どこで勤務したことに対する給与かが重要です。

通常の使用人としてインドネシアで勤務している期間に対応する給与については、日本法人から支給されている場合であっても、原則として日本では課税されず、インドネシア側で課税関係を確認することになります。国税庁も、非居住者が受け取る給与について、日本本社から支払われていても勤務地が外国である場合、原則として日本の所得税は課税されないと説明しています。

一方、一時帰国中に日本で勤務した期間に対応する給与や賞与については、日本国内源泉所得として、日本で課税対象となる可能性があります。非居住者に対して日本国内で源泉徴収対象となる国内源泉所得を支払う場合、原則として源泉徴収が必要です。

また、海外で勤務している使用人や、使用人として常時海外で勤務している役員に対して賞与などが支払われ、その計算期間内に日本で勤務した期間が含まれている場合には、日本勤務期間に対応する部分について20.42%の源泉徴収が必要とされています。

日本法人の役員として国外勤務している場合

日本法人の役員として国外勤務している場合には、通常の使用人として海外勤務している場合と取扱いが異なります。

内国法人の役員として国外勤務した場合、その給与は日本国内で生じたものとして扱われ、20.42%の源泉徴収対象となります。

ただし、役員であっても、海外支店長など、その内国法人の使用人として常時海外において勤務している場合には、その使用人としての勤務に対する給与については、源泉徴収不要とされる場合があります。

ここで注意すべきなのは、単に「役員でありながら海外にいる」というだけで源泉徴収不要になるわけではないという点です。使用人として常時海外において勤務している実態があるか、その給与が役員としての報酬なのか、使用人としての勤務に対する給与なのかを区分して確認する必要があります。

したがって、一時帰国時の給与課税では、給与の支払地だけでなく、勤務場所、給与の対象期間、給与負担者、役員か使用人か、租税条約の適用可否を確認することが重要です。

インドネシア法人から支給される給与

次に、インドネシア法人から給与を受けている場合です。

一時帰国中であっても、インドネシア法人との雇用関係が継続し、インドネシア法人から給与が支払われるケースがあります。

日本滞在中に実際に日本で勤務している場合、その期間の給与について、日本で国内源泉所得として課税対象となる可能性があります。ただし、租税条約上の短期滞在者免税の要件を満たす場合には、日本での課税が免除される可能性があります。

ここで重要になるのが、いわゆる183日ルールです。

183日ルールと短期滞在者免税

日イ租税条約では、一定の要件を満たす場合、短期滞在者の給与について、滞在国での課税が免除される場合があります。

一般的には、次のような要件を確認します。

・日本での滞在日数が一定期間内で183日を超えないこと
・給与の支払者が日本の居住者でないこと
・給与が日本国内の恒久的施設により負担されていないこと

これらの要件を満たす場合、インドネシア法人から支給される給与について、日本での課税が免除される可能性があります。

ただし、183日判定は単純に暦年だけで判断するとは限りません。租税条約上の対象期間や滞在日数の数え方を確認する必要があります。

一時帰国が183日以上になった場合

一時帰国が長期化し、日本滞在が183日以上となる場合、短期滞在者免税の適用が難しくなる可能性があります。

この場合、日本滞在中の勤務に対応する給与について、日本で課税対象となる可能性が高まります。

たとえば、インドネシア法人から給与を受けている場合でも、日本滞在中に日本で勤務している部分について、日本で確定申告が必要となる可能性があります。

一方、インドネシアの税務上、引き続きインドネシア居住者として扱われる場合には、インドネシア側でも給与所得の申告が必要となる可能性があります。

そのため、日本で課税された所得税について、インドネシア側で外国税額控除を検討することがあります。

日本で課税された場合のインドネシア側の取扱い

日本で給与に対して所得税が課された場合でも、インドネシアでの申告が不要になるとは限りません。

インドネシア居住者として扱われる期間については、原則としてインドネシアで申告対象となる所得を整理する必要があります。

日本で納税した所得税については、インドネシア側の確定申告において外国税額控除の対象となる可能性があります。ただし、控除できる金額や必要書類には制限があるため、日本側の納税証明、源泉徴収票、給与明細、勤務日数の記録などを保管しておくことが重要です。

一時帰国費用の負担

一時帰国に伴う航空券、宿泊費、交通費などを、日本法人とインドネシア法人のどちらが負担すべきかも重要な論点です。

原則として、費用をどちらの法人が負担すべきかは、その一時帰国の目的によって判断します。

たとえば、日本本社の要請により、日本で会議に出席するために一時帰国する場合、日本法人の業務目的といえるため、日本法人が費用を負担することが自然です。

一方、インドネシア法人の業務上の都合により一時帰国する場合や、インドネシア法人の雇用管理上必要な対応である場合には、インドネシア法人が費用を負担することも考えられます。

また、出向契約書や駐在員規程に「駐在員の一時帰国費用はどちらの法人が負担するか」が定められている場合には、その内容との整合性も確認する必要があります。

費用負担を誤った場合のリスク

一時帰国費用の負担関係が実態や契約と合っていない場合、次のようなリスクがあります。

・日本法人側で寄附金とみなされるリスク
・インドネシア法人側で損金性を否認されるリスク
・給与課税または現物給与と判断されるリスク
・移転価格上、グループ会社間の費用負担が不合理と見られるリスク

特に、日本法人とインドネシア法人のどちらが費用を負担するかは、出向契約、雇用契約、実際の業務目的、指揮命令関係と整合させる必要があります。

一時帰国時の税務チェックリスト

一時帰国が長期化する可能性がある場合には、次の点を確認しておくとよいでしょう。

確認項目 主な確認内容
日本滞在日数 183日未満か、183日以上か
勤務日数 日本勤務日とインドネシア勤務日
給与支払者 日本法人、インドネシア法人、双方支給の有無
給与負担者 最終的にどちらの法人が負担しているか
役職 使用人か、日本法人の役員か
租税条約 短期滞在者免税の適用可否
日本側税務 源泉徴収、確定申告の要否
インドネシア側税務 居住者判定、外国税額控除
費用負担 一時帰国費用をどちらの法人が負担すべきか
契約書 出向契約、駐在員規程との整合性

よくある質問

Q1. 一時帰国中の日本払い給与は日本で課税されますか?

日本滞在中に日本で勤務している期間に対応する給与であれば、日本で課税対象となる可能性があります。一方、通常の使用人としてインドネシアで勤務している期間に対応する給与については、日本法人から支払われていても、原則として日本では課税されません。役員の場合は取扱いが異なるため、個別確認が必要です。

Q2. 日本法人の役員としてインドネシアに駐在している場合はどうなりますか?

日本法人の役員として国外勤務している場合、その給与は日本国内で生じたものとして20.42%の源泉徴収対象となることがあります。ただし、海外支店長など、その内国法人の使用人として常時海外において勤務している場合には、その使用人としての勤務に対する給与について源泉徴収不要とされる場合があります。

Q3. 役員であれば、海外勤務中の給与はすべて日本で源泉徴収されますか?

必ずしもそうではありません。内国法人の役員としての給与は原則として20.42%の源泉徴収対象となりますが、その内国法人の使用人として常時海外勤務している場合には、その使用人としての勤務に対する給与について源泉徴収不要とされる場合があります。役員報酬と使用人給与の区分、勤務実態、契約関係を確認する必要があります。

Q4. 183日未満であれば必ず日本で非課税になりますか?

必ず非課税になるわけではありません。短期滞在者免税を使うには、滞在日数だけでなく、給与の支払者、給与の負担者、恒久的施設の有無などの要件を満たす必要があります。

Q5. 183日以上日本に滞在した場合、どうなりますか?

短期滞在者免税の適用が難しくなり、日本滞在中の勤務に対応する給与について、日本で課税対象となる可能性があります。インドネシア側でも居住者として申告が必要な場合には、日本で納付した税額について外国税額控除を検討します。

Q6. 一時帰国費用は日本法人とインドネシア法人のどちらが負担すべきですか?

一時帰国の目的によります。日本本社の業務のためであれば日本法人負担、インドネシア法人の業務・雇用管理上の必要性によるものであればインドネシア法人負担が考えられます。出向契約や駐在員規程との整合性も重要です。

Q7. 一時帰国中もインドネシアで申告が必要ですか?

インドネシアの税務上の居住者である期間については、インドネシアでの申告が必要となる可能性があります。日本で課税された場合でも、インドネシア側で外国税額控除を検討することがあります。

まとめ

インドネシア駐在員が一時帰国する場合、税務上は日本滞在日数、給与の支払者、給与の負担者、勤務実態、役員か使用人かを確認する必要があります。

通常の使用人としてインドネシアで勤務している期間に対応する給与は、日本法人から支給されていても、原則として日本では課税されません。一方、一時帰国中に日本で勤務した期間に対応する給与は、日本で課税対象となる可能性があります。

また、日本法人の役員として国外勤務している場合には、通常の使用人とは異なり、原則として20.42%の源泉徴収対象となる点に注意が必要です。

一時帰国が長期化し、日本滞在が183日以上となる場合には、日本側で給与課税が発生する可能性が高まります。また、インドネシア側でも引き続き居住者として申告義務がある場合には、日本で納税した所得税について外国税額控除を検討することになります。

一時帰国費用についても、どちらの法人が費用負担すべきかを、出向契約や業務目的に照らして確認する必要があります。

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