インドネシア国外への支払いにかかる税務|PPh26とVAT Offshoreの実務ポイント

PPh26とは、インドネシア法人が国外法人またはインドネシア非居住者へ支払いを行う場合に確認が必要となる源泉所得税です。

インドネシア法人が、インドネシア国外にある法人やインドネシア非居住者である個人へ支払いを行う場合、税務上どのような処理が必要になるのでしょうか。

形のある物を輸入する場合には、通常、PIBと呼ばれる輸入申告書に基づき、関税、PPh22、VATなどが計算され、輸入時に納付されます。

一方、物が税関を通らない取引、たとえば国外から提供されるサービス、国外借入に伴う利息、国外株主への配当、海外ノウハウやブランド使用料としてのロイヤリティなどは、輸入申告書で自動的に課税処理されるわけではありません。

このような国外への支払いについては、インドネシア法人が自らPPh26源泉税やVAT Offshoreの要否を確認し、必要に応じて納付・申告を行う必要があります。

この記事でわかること

・PPh26源泉税の基本
・租税条約を使う場合のDGTの重要性
・国外サービス料、利息、配当、ロイヤリティの税務処理
・VAT Offshoreが必要となる取引
・PPh26とVAT Offshoreを混同しないための実務ポイント

PPh26とは

PPh26とは、インドネシア国内源泉所得をインドネシア国外の法人または非居住者個人に支払う場合に課される源泉所得税です。

代表的な対象取引には、次のようなものがあります。

・国外法人から提供されたサービスに対する報酬
・国外借入に伴う利息
・国外株主への配当
・海外ノウハウ、ブランド、商標、技術などの使用料
・ロイヤリティ
・その他、インドネシア源泉所得と判断される支払い

原則として、PPh26は総支払額に対して20%で源泉徴収されます。たとえば、国外法人への支払額が100であれば、20をPPh26として源泉徴収し、支払先へは80を送金するという考え方になります。

ただし、租税条約が適用できる場合には、税率が軽減されることがあります。

租税条約とDGT

インドネシアは、日本を含む多くの国と租税条約を締結しています。租税条約の適用により、PPh26の税率が軽減される場合があります。

たとえば、支払先が日本法人である場合、一般的には次のような取扱いが検討されます。

支払いの種類 インドネシア国内法上のPPh26 日イ租税条約適用時の考え方
サービス料 原則20% 恒久的施設がなければ0%となる可能性
利息 原則20% 10%となる可能性
配当 原則20% 15%等となる可能性
ロイヤリティ 原則20% 10%となる可能性

ただし、租税条約の軽減税率を適用するためには、支払先が租税条約相手国の居住者であることを示す書類が必要です。実務上は、DGTと呼ばれる居住者証明関連書類の取得・提出が重要になります。

DGTがない、または有効期限が切れている場合、租税条約の軽減税率を適用できず、国内法上の20%課税となるリスクがあります。

DGT取得時の実務上の注意点

DGTは、単に取引先から受け取ればよいというものではありません。支払時点、申告時点、有効期間、取引内容との整合性を確認する必要があります。

特に注意すべき点は、次のとおりです。

・支払先が租税条約相手国の居住者であること
・DGTの記載内容と実際の取引内容が一致していること
・DGTの有効期間内に支払いが行われていること
・月次源泉税申告に適切に添付・反映されていること
・受益者要件や実質的な所得受領者の確認が必要となる場合があること

実務上、DGTは一度取得すれば永続的に使えるものではありません。一定期間ごとに更新が必要となるため、国外取引が継続している会社では、有効期限管理が重要です。

VAT Offshoreとは

国外への支払いで注意すべき税金は、PPh26だけではありません。インドネシア国外からサービスや無形資産の提供を受ける場合、VAT Offshoreの対象となることがあります。

VAT Offshoreとは、国外事業者から提供された課税サービスや無形資産をインドネシア国内で利用する場合に、インドネシア側の利用者がVATを自己申告・納付する仕組みです。

たとえば、次のような取引が対象となることがあります。

・国外法人からのコンサルティングサービス
・国外ITサービス、システム利用料
・国外からの技術支援
・海外ノウハウやブランド使用料
・ロイヤリティ
・ソフトウェア、ライセンス、クラウド利用料

国内取引であれば、インドネシアの売手がFaktur Pajakを発行し、VATを徴収・申告します。しかし、国外法人や非居住者は通常インドネシアでFaktur Pajakを発行しません。そのため、インドネシア法人側がVAT Offshoreとして自主的に納付・申告する必要があります。

PPh26とVAT Offshoreは別の税金

実務上よくある誤解が、DGTを取得してPPh26が0%または軽減税率になれば、VAT Offshoreも不要になるというものです。

これは誤りです。

DGTや租税条約は、基本的に所得税であるPPh26の税率に関係するものです。VAT Offshoreは付加価値税の論点であり、DGTの有無によって自動的に不要になるものではありません。

たとえば、日本法人からコンサルティングサービスを受け、租税条約によりPPh26が0%となる場合でも、そのサービスがインドネシア国内で利用される課税サービスであれば、VAT Offshoreの申告・納付が必要となる可能性があります。

PPh26とVAT Offshoreの比較

項目 PPh26 VAT Offshore
税目 源泉所得税 付加価値税
主な対象 国外法人・非居住者へのインドネシア源泉所得の支払い 国外から提供されるサービス・無形資産の国内利用
税率 原則20%、租税条約で軽減あり 一般的にはVAT税率に基づく
DGTの影響 あり 原則としてなし
申告主体 インドネシアの支払者 インドネシアの利用者・支払者
典型例 利息、配当、ロイヤリティ、サービス料 国外サービス、ロイヤリティ、ソフトウェア利用料

このように、PPh26とVAT Offshoreは別々に判定する必要があります。

取引別の確認ポイント

1. 国外サービス料

国外法人からコンサルティング、技術支援、ITサポートなどを受ける場合、PPh26とVAT Offshoreの両方を確認します。

租税条約上、恒久的施設がない場合にはPPh26が0%となる可能性がありますが、VAT Offshoreは別途必要となる場合があります。

2. 利息

国外借入に伴う利息は、PPh26の対象となります。日イ租税条約を適用できる場合、軽減税率が適用される可能性があります。

一方、利息支払いは通常、VAT Offshoreの対象とはならないことが一般的です。

3. 配当

国外株主への配当もPPh26の対象となります。租税条約により軽減税率が適用される可能性があります。

配当は利益分配であり、通常VAT Offshoreの対象とはなりません。

4. ロイヤリティ

海外ノウハウ、商標、ブランド、技術、ソフトウェアなどの使用料は、PPh26の対象となります。また、VAT Offshoreの対象にもなりやすい取引です。

ロイヤリティは税務調査で指摘されやすいため、契約書、料率の妥当性、知的財産の使用実態、移転価格文書との整合性も確認する必要があります。

実務上のチェックリスト

国外への支払いを行う前に、少なくとも次の点を確認しておくべきです。

・支払先はインドネシア非居住者か
・支払いの内容はサービス料、利息、配当、ロイヤリティのいずれか
・インドネシア源泉所得に該当するか
・PPh26の対象となるか
・租税条約を適用できるか
・DGTを取得しているか
・DGTの有効期限内か
・VAT Offshoreの対象となるか
・VATを自己申告・納付する必要があるか
・契約書、請求書、作業報告書などの証拠資料があるか

よくある質問

Q1. DGTを取得すればPPh26は必ず0%になりますか?

必ず0%になるわけではありません。支払いの種類や租税条約の内容によって税率は異なります。サービス料は0%となる可能性がありますが、利息、配当、ロイヤリティは軽減税率が適用される場合でも一定の税率が残ることがあります。

Q2. DGTがあればVAT Offshoreも不要になりますか?

不要にはなりません。DGTは主にPPh26の租税条約適用に関する書類です。VAT Offshoreは別の税目ですので、国外サービスやロイヤリティがインドネシア国内で利用される場合には、VAT Offshoreの申告・納付が必要となる可能性があります。

Q3. 海外から請求書を受け取っただけで課税されますか?

請求書の有無だけで判断するのではなく、取引内容が重要です。サービス、ロイヤリティ、利息、配当など、支払いの性質に応じてPPh26やVAT Offshoreの要否を判断します。

Q4. ロイヤリティはPPh26だけ見ればよいですか?

いいえ。ロイヤリティはPPh26だけでなく、VAT Offshore、法人税上の損金性、移転価格税制も確認する必要があります。特に関連会社へのロイヤリティ支払いは、税務調査で確認されやすい論点です。

Q5. VAT Offshoreは売上VATから控除できますか?

一定の要件を満たす場合、VAT Offshoreとして納付したVATは売上VATから控除できる可能性があります。ただし、取引が事業に関連していること、適切に納付・申告していること、証憑が整っていることが重要です。

まとめ

インドネシア法人が国外法人や非居住者へ支払いを行う場合、PPh26とVAT Offshoreの確認が必要です。

PPh26は、国外法人や非居住者に対するインドネシア源泉所得の支払いに関する源泉税です。租税条約を適用する場合には、DGTの取得と有効期限管理が重要になります。

一方、VAT Offshoreは、国外から提供されるサービスや無形資産をインドネシア国内で利用する場合に問題となるVATです。DGTによってPPh26が軽減または0%になった場合でも、VAT Offshoreが不要になるわけではありません。

国外への支払いでは、取引内容ごとに、PPh26、VAT Offshore、契約書、証憑、移転価格文書との整合性を確認することが重要です。

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関連サービス:インドネシア会計税務サポート