
第6回労務相談室 能力不足の社員の解雇
コロナ禍でコスト削減案を探っていると、どうしても気になるのが業績の良くない社員です。別に悪いことはしないし普通に働いているけれども、成果が上がらなかったり、期待するように動いてくれなかったりという社員は少なからずいます。通常は教育して向上を促しますが、どうも能力を超えてしまっているという場合は「解雇」が脳裏をよぎります。解雇の難しいインドネシアで能力不足の社員の解雇は可能なのでしょうか。
【解雇申請の条件】
能力不足による社員の解雇は原則としては可能です。ただし以下3つの証拠、①すでに教育をした証拠、②能力が足りない証拠、および③他の業務も試したけれども社内にできる職務がない証拠が必要です。①は教育訓練に参加した証拠であったり、面談記録などを使うことができます。②は査定結果です。所属部署から「使えないから解雇してほしい」と言われたのに当該上⾧が行った査定結果は「普通」だったというようなことは頻繁にあります。事実に沿った評価を勇気をもって行う必要があるのです。少なくとも3回連続で評価が悪いという結果が必要だと一般的に言われています。けれどもその3回は必ずしも年1回の年次賃金調整時の査定に基づき3年かかるという意味ではありません。中間評価を行う会社もあれば、賞与のための査定を行う会社もありますので、どの結果でも使うことは可能です。③は具体的に言うと職務変更もしくは異動を行った記録です。別の業務も試したけれどもやはり能力が足りないということを②と一緒に証拠づける必要があります。
【雇用関係終了のプロセス】
能力不足の社員の解雇
上記3つの証拠を完備すれば解雇ができるのかというと、ここはインドネシアの労働者寄り労働法規が立ちはだかります。法規に沿った雇用関係終了のプロセスを行おうとすると、法的に可能な理由であるにも関わらず、二者協議→所在地管轄労働地方事務局による仲裁→労使紛争解決裁判所→最高裁判所という⾧いプロセスを辿る可能性があります。必要な期間や費用はどの段階で合意を得られるかにかかっています。裁判に入ってしまうと弁護士が必要になりますし、停職処分にしている間は最⾧6カ月という期限はありますが100%の賃金支給義務がありますので、その費用も必要になります。労使紛争解決法と呼ばれる2004年法律第3号では各(2020年8月28日)プロセスの期限を設定していますが、実際には仲裁で数カ月、労使紛争解決裁判所の対応でも数カ月、最高裁判所ではしばしば1年を超える時間がかかります。ですからできる限り労使の合意で終了させることをお勧めします。会社側の準備が万全であれば裁判になっても勝てないことを社員は理解しやすいです。最終的には退職金をいくら払うかというネゴになることが多いですが、法規にしたがった退職金額をもとに交渉を始めるべきでしょう。
関連法規:2004年法律第2号 UU-2/2004



