第30回労務相談室 労働者社会保障の現状

本年2月に急に話題になった労働社会保障プログラムBadan Penyelenggara Jaminan Sosial Ketenagakerjaan(略称 BPJS Ketenagakerjaan)の老齢保障Jaminan Hari Tua(略称JHT)ですが、法規改定に係る周知不足による失敗の典型的な例となってしまいました。改定を発表し、反対にあって引っ込めるということはこれまで何度もやってきているのですが、今回の内容そのものは極めて論理的であり、実はあるべき姿であったと言ってもよい状態でした。これを機会に労働者 社会保障をおさらいしてみましょう。

【2種類の社会保障プログラム】

社会保障プログラムは労働社会保障プログラム(以下労働BPJS)と健康社会保障プログラム(以下健康BPJS)からなっています。インドネシア語を直訳しますとBPJSは社会保障実施機関となりますので、実は組織の名称なのですが、現状ではプログラムもこの名称を使っています。そもそも健康BPJSは労働BPJSの中にあった健康保障Jaminan Kesehatanを移行したものです。労働BPJSは公務員や軍、国有企業用の社会保障プログラムと以前Jamsostekと呼ばれた民間企業用の社会保障プログラムを統合させて結成された組織です。これまで別々に運用していたいくつかの社会保障プログラムを統合し、国民健康保険としての健康BPJSとあらゆる労働者を対象とした労働BPJSが2014年1月1日に設立されました。労働BPJSはその前の母体も長期間の経営経験があるため比較的落ち着いた操業が行われていますが、健康BPJSは民間企業では既定よりよいスペックの保障を行えば加入義務がなかったものであり、その上いきなり労働者だけではなく貧困層への補助も含めた国民健康保険となってしまったため、現在に至るまで病院への不払い、赤字の連続という問題を繰り返しています。

【労働BPJSの5つのプログラム】

労働BPJSはもともと労働災害保障Jaminan Kecelakaan Kerja(略称 JKK) 、死亡保障Jaminan Kematian(略称JK)、老齢保障と健康保障の4つのプログラムからなっていました。健康BPJSと分れた際健康保障はなくなりました。2015 年に年金保障Jaminan Pensiun(略称JP)が始まり、再び4つのプログラムが動きました。年金保障は15年間の加入期間を経て初めて月額での年金支給が開始されるため、定年後の一時金として掛け金に運用益を追加した金額を受領します。 一方で老齢保障は雇用関係が終了した会社からの文書である就業証明書Surat Keterangan Kerjaを提出することでそれまでの掛け金に運用益を追加した金額を一時金として受領することができ ます。ですから失業保障としての機能も兼ね備えていたのですが、オムニバス法により失業保障Jaminan Kehilangan Pekerjaan(略称JKP)が追加され、2022年2月より受給が可能となったため、老齢保障の失業保障としての機能をなくし、純粋に定年退職後の老齢保障として機能させようとしたのが今回の老齢保障の受給年齢規定の改定でした。ただ失業保障の受給開始やその内容の周知が十分でなく、労働者の積み立て分を受け取れなくなるような錯覚に陥り、今回の大反対となったのです。もうしばらく失業保障の実例を静観する必要がありそうです。

関連法規:2011年法律第24号UU-24/2010、2021年政令第37号PP-37/2021