
第48回 労務相談室 2024 年最低賃金の謎
毎年11月になると不安を誘う翌年の最低賃金決定ですが、2024年最低賃金は大変奇怪な感じで設定され、現在もお決まりのデモは行われているとはいえ、何となくこのまま進むのかという雰囲気を醸し出しています。決定前の11月初旬には大きなデモが行われ、いくつかの工業団地を封鎖するような過激な動きが約10年ぶりに見られましたが、定められた最低賃金は労使ともに想定外の数値でした。時系列的にまとめながら2024年最低賃金の動きを見てみましょう。
【県知事からの提案と州知事決定】
そもそも労使政からなる賃金調整委員会なるものが、基本となる規則もなく喧々諤々交渉し、時にはいずれかの側がボイコットなどもしながら、毎年ビクビクして最低賃金を待っていた時代は、「インフレ率+GDP率」という何ともよくわからない計算式が決められたところから変わってきました。どうしてこの 2 つを足すのかと疑問に思っているところで、最初のオムニバス法によって「インフレ率もしくはGDP率」に変更になり、2021年政令36号で詳細計算式が設定され、落ち着きを見せ始めました。けれどもその後「+α」だ、「インフレ率+(GDP率×α)」だとよくわからなくなりながらも、政府は最低賃金の上昇を抑えてきました。コロナ禍も相まって会社が潰れては元もこもないということで我慢してきた労働者が2024年最低賃金決定前に「コロナ収束後の今からは以前のような上昇率を」と騒ぎ始めました。毎年なぜか「15%」の上昇を叫び続けた全インドネシア労働組合連合は今年西ジャワ州カラワン県やブカシ県のいくつかの工業団地を封鎖し、県知事に10%を超える最低賃金上昇提案を州知事に出させました。これまで県知事からの提案を州知事が変更することは少なく、労働組合側もこれを受け入れ、デモが解除されました。けれどもその後に発布された州知事決定で定められた最低賃金の上昇率は5%に満たないものでした。
【統一地方選との関り】
州知事決定を知った多くの企業がこの決定は労働組合の怒りを買うであろうと予想しましたが、実際には現時点に至るまで大きな動きが見られません。バンドゥン市内の西ジャワ州政府庁舎などでデモ活動が行われていますが、インパクトは少ないです。すでに定められた2024年最低賃金の額を見直すに至るような動きは行われておらず、これまでの全インドネシア労働組合連合とは異なった動きを見せています。全インドネシア労働組合連合の上層部が2021年に設立した政党との関連で、2024年2月14日に大統領選挙と一緒に実施される予定の総選挙と影 響があるのではないかというのが巷の噂です。このタイミングで政府にあまり反抗することは不利益につながると考えているようです。これまで会社に権限のある勤続期間1年以上の社員の昇給率に言及したり、州知事決定は変更せずに私見を言ったりということで、最低賃金額は変えずに労働者寄りの立ち位置を示そうとする州知事が少なくなかったので、今後まだこのまま変わらないと言う確約はありませんが、2024年1月からの年次賃金調整には取り組んでいく必要があります。会社としてどうすべきかをしっかり考え、最低賃金上昇率に惑わされないことが大切です。



